「今週の忘れ物チャンピオンはばんばんさんです」
わたしの机の右上に貼られたシールは、今日も右下には届いていない。
このクラスの忘れ物ルール。それは忘れ物をすると机の右上からシールを1枚ずつ貼ることだ。先生が作った忘れ物シール。正方形で緑色をしたシール。それを忘れ物1つにつき1枚ずつ机に貼る。毎日いくつか貼っていくと、机の奥の右上から手前の右下までがシールで埋まることになる。クラスの中にはあと1枚で右下まで届きそうな机もある。
だけど、わたしの机の右上に貼られたシールは右下には届かない。
届いたことがない。
今週もわたしの机に貼られているシールは5枚しかない。
今週もわたしの机の右上に貼られたシールは右下には届かない。
それでもわたしは「今週の忘れ物チャンピオン」だ。
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わたしの机に貼られるシールは2種類。
緑と黄色。
黄色のシールが貼られる子は、クラスに3-4人しかいない。
レア黄色シール。
黄色のシールは机に貼りきれなくなることを考えて先生が編み出したルール。緑のシールが5枚になると、その5枚の緑のシールは1枚の黄色のシールに貼り替えられる。黄色のシール1枚で5つの忘れ物。
大抵の子には机に貼りきれなくなるぎりぎりの時に黄色のシールが渡される。だけど、わたしの場合は緑のシールが6枚を越えた時点で黄色のシールが渡される。これからもわたしが忘れ物をするだろうと思われているから。
忘れ物シールは一定の期間でリセットされる。一定の期間が1週間だったか2週間だったか1ヶ月だったかは覚えていないけれど、1週間で10個以上も忘れ物をしていたとしたら結構すごいことだったな、と今は思う。
このシールは目立つ。
多分、目立つ。
結構、目立つ。
配布物を配るときに机をちらりと見ていく人が、みんなこのシールを見ていくような気がした。保護者会でもそのシールは剥がされることはない。自分の母や、友だちのお母さんお父さんもみんなこのシールを見ていたような気がした。
疑問に思ったお母さんが、「あの机にはなぜ黄色のシールが貼られているの」と、自分の子に尋ねる場面にいあわせたことがあった。
「あなたのお子さんの机に貼られていないこの黄色のシールは、1枚で5個分の忘れ物ってことで、大変不名誉なシールなのですよ」というようなことを心の中で呟いた(こんな風には呟いてないと思う。小学生だから)。
壁にも忘れ物グラフが貼られていた。実名入りで棒グラフになっていた。母に言わせると、色の違いがよくわからないシールよりも、壁のグラフのほうが恥ずかしかったらしい。
◇
忘れ物チャンピオンの発表もあった。
わたしと1位を争うのはMくんだ。Mくんはいつも手や足が、マジックのいたずら書きや、外遊びで汚れているような感じの子だった。勉強はできなかったが運動は大好きで体育も大好き。よく男子同士でちょっとしたケンカをしていた暴れん坊。でも女子には優しかった。わたしとも仲は悪くなかった。
大抵はMくんに忘れ物チャンピオンを譲って、わたしは2位か3位にいたけれど、わたしも時々1位になって
「今週の忘れ物チャンピオンはばんばんさんです」
と、発表されると、
「M~今週は惜しかったな~」
「ばんばん、女子なのにぃ」
という男子の遠慮ない歓声があがった。
「へへ~」←Mくん
「へへへ~」←わたし
その節は迷惑もかけたと思う。
同級生の皆さんごめんなさい。
◇
先生にここまでされても、恥ずかしいという気持ちもあまりなかったような気がします。いや、なくなったのかな。最初は恥ずかしかったのかな。
シールの数を増やさないように、とは思ったけど、増えてしまったものはもう仕方ない。そこは甘んじて。チャンピオンでいいじゃない~くらいの開き直った甘えた気持ちだった気がします。
◇
ランドセルを家の前に置いて学校へ行ってしまったり、逆にランドセルを校庭に置いたまま帰ってきてしまったり。忘れ物をすると、母が学校まで持ってきてくれたり、きょうだいが気がついて持ってきてくれたりということもありました。
そんなわたしでしたが、母もわたしの忘れ物を、それほど気にしていなかったのではないかと思います。忘れ物のことで叱られた記憶はなくはないのですが、ものすごくものすごく叱られたという記憶もないのです。
いまでも小学生の頃のことを言われるときは「あなたは忘れ物が多かったわよね~」と、忘れ物の多さが話題にはなりますがその程度です。
◇
大人になって治ったわけではないです。普通にしてたら忘れます。今日も「寒いからウールのオーバーパンツ(毛糸のパンツ)はいていこう」と思ったのにはくのを忘れたし。だから忘れないようにします。だから今日は冷えてます。
普通でいたら忘れ物はするので、指さし声だし確認。旅行や引っ越しの前にはリスト作って指さし声だし確認。
忘れ物防止チェック
チェック方法
- 指さし確認
- 声出し確認
- 他人確認
1.2.は、まさに指を指して
「財布入れたっ」
「ケータイ持った~」
「suicaよーし」
と、声に出して確認します。
3.の他人確認は、人が側にいたら
「わたし見積書持ったからね」
「バッグに入れたからね」
と、言います。
これは迷惑になることもありますが、同行者には許してもらいます。
「入れた」という自分の中での記憶の上書きにもなるので
「入れかな?」という不安もなくすことができます。
わたしの忘れない方法(現在)
- 翌日持っていきたいものは全部バッグの中に入れる。
- バッグに入りきれないものはバッグの上に置く。
- バッグ類が複数の時はバッグの上にバッグを置いておく。
- 玄関から外に出る前に、玄関を見渡す。
- バッグを変えたときには、もとのバッグが空になっているか何度も確認する。
- 絶対最低限持たなくてはいけないものだけ、複数回チェックする。
- 取りに帰る時間を考えて家を出る。
5はたいていは、財布、携帯です。極論すれば大人になればお金さえあればどうにかなります。時間さえあればコンビニなどに飛込んで買っちゃえばいいのです。
あとは薬。処方薬だけは買えないので服薬中は注意。普段からバッグに入れて、バッグから出しても出しっぱなしにはしません。
他に「これを渡すために会う」「これを届けに行く」というときの「これ」はドアの前で何度も確認します。
玄関を出て20mくらい歩くと忘れ物に気がついたりすることが多いので、その範囲の「取りに帰るが」6です。
とはいいつつ、大人になってからも、社会人になってからも
\(>_<)/ギャ-
ということは何度も何度もあります。
◇
小学校のように
- 毎日持っていくものが変わって
- ときどきイレギュラーに持って行かなくてはいけないものが出現する
のは大変だよなぁと今でも思います。
これを読んで「ああ、わたしもその機能を持っていなかったのかな」と思いました。「機能搭載」という表現いいですね。
わたしも友人と
「普通にしていれば忘れないでしょ」
「普通にしてたら忘れるじゃん」
「いや、それおかしいよ」
と言い合いになったことがあったので、ああ、そういうことか、と腑に落ちました。
友人にはその機能が搭載されていて、わたしにはその機能搭載がされていなかったということなのでしょう。機能搭載されていなければ、何かで補うわけです。自分で不便を感じて補おうと思って、それがまあまあ補えるようになったのはいつからだったかしら。
う~ん。
う~ん。
何も覚えていない自分にびっくりぽんで
今日はここまで。
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