おうつしかえ

ブヒブヒ言ってるだけです。誰も恨んでいません。

怖いおじさんが...火事になっても寝ていた時のこと

幼稚園のころのことです。

 

わたしは小さいころから、寝付きが悪く、悪夢を見る子で、そして一度寝たらなかなか起きないお寝坊さん、という、可愛らしい 子でした。

 

小さいころに住んでいた家は、古い日本家屋で、風が吹くと扉やどこかがガタガタと音が鳴りました。まるで誰かが入ってこようとしているかのように。

 

すきま風は誰かが泣いているような音をたてました。風がびゅーびゅーと吹きすさび、裏の木々が叫ぶときは、この世の物でないものが風と一緒に闇の中を泳いでいるようでした。

 

風の強い日は恐ろしい。

 

その夜はなかなか寝付けませんでした。いつものことで珍しくはありません。それでも、暗くされた部屋できょうだいと並んで寝ているうちに、眠ってしまったようです。

 

 

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その日の夢も怖い夢でした。

 

 

裏庭に出てみると男の後ろ姿が見えました。

 

何をしているのか見えないのですが、しゃがみ込んで何かをしている様子がうかがえます。

 

なんだかはわかりません。顔も見えません。でもその男がとてもとても恐ろしかったのです。

 

ギュッと目をつぶって、男を見ないようにしているのに、夢だからでしょうか。はっきりと男の背中が見えてしまいます。

 

ここから逃げなくちゃ。

 

と思ったのですが、草に足を取られて逃げられません。

 

これは夢だ。

これは夢だ。

これは夢だから。

 

 

遠くから

「起きてー起きてー」

という声が聞こえます。

 

起きたくないー

まだ朝じゃないから寝ていたいから

起きたら怖いおじさんがいるかもしれないから

 

目をぎゅっとつぶって寝ていました。

 

「火事なのよーーー!!起きてーーー!!」

という母の声と

「起きろーーー!!」

というきょうだいの声。

 

それでもわたしはギュッと目をつぶって眠っていました。

 

「しょうがない」

 

母がわたしを背負い、外に出ました。

冬でした。

 

猛烈な寒さを頬に感じて、やっとわたしも目を醒ましました。

 

明るい。

 

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母の肩越しに見た、大きな炎は見たこともない炎でした。

自分の視界の空の3分の2以上が炎でした。

 

それからわたしときょうだいは、近所の家に避難しました。

 

そこのおばさんが「寝ていていいのよ」と言ってくれましたが、怖くて怖くて震えが止まらず、泣きながら震えていました。

 

「寒いなら何か持ってこようか?」と言われても、首を振って、ただただ泣いていました。

 

運良くわたしの家は燃えませんでした。

 

外側の柱が一部焦げたくらいでおさまりました。

物置などは燃えてしまいました。

 

「あのとき風がおさまっていたのよ。だからうちが助かったの。あのまま風が強かったら、うちも全焼していたかも」

 

ちょうど風が弱くなっていたそうです。

 

その火事の時から、わたしは家族に

「この子は火事でも起きない寝坊助だから」

と、何度も何度も言われました。

 

違うんだよー。

おじさんが怖かったから起きなかったんだよー。

 

と言っても、誰も取り合ってくれませんし、わたしも今思うと、夢で怖かったなら、早く目を醒ませばよかったのに。そう思います。

 

火事の原因ですか。

放火でした。

今週のお題「ゾクッとする話」

 

今日はここまで。

 

 

 

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