おうつしかえ

ブヒブヒ言ってるだけです。誰も恨んでいません。

362円(サンロクニ)カキめし重、480円の30%オフで牡蛎4個と蕗

腹が減った。

気がついたら夕飯がまだだった。

 

気がついたら、というのは言い過ぎだろう。夕飯のことを忘れたことなんか一度もないのだ。わたしに限って。

 

取り急ぎ、食えるものを食おう。そんな気持ちにもなるが、食に情熱を失ったわけじゃない。ダイエット中だし、若くないんだから、もう食べることばかりを考えているわけにはいかないんだ、と思いながらも、食に対する内なる情熱は失われていない。いや、失われていないどころか滾っていると言ってもよいだろう。

 

ふらりと一人で寄って、短時間で食える店を考える。ただしそれなりにうまいものを食わせる店。満州餃子で餃子をたらふく食うのもよいだろう。もうこのあとに誰かに会う予定はないからにんにくも厭わない。気軽に松屋で牛皿定食という手もある。いや、今の松屋ならグリーンカレーだろう。だが、グリーンカレーを食べるなら、その近くのパキスタン料理屋さんで本格的なカレーを。いや、違う。それは違う。短時間でという最初の目的から外れている。それほど時間がかかるとは思えないが、あの店はゆったりと食べるときに使いたい店だ。思考を元に戻そう。横道に逸れるということは、選択肢を考える余裕があるということなのか、それとも集中力が散漫になっているということなのか。

 

 

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ポケットでスマホが震えている。歩道の脇に寄りスマホを取り出して確認をしてみると、メールが届いていた。Sからだった。最後の頼みの綱だったSからだった。知らせはNG。やはりだめだったか。「承知しました。またの機会に」とだけ返信をし、空を仰ぐ。曇っている夜空にうっすらと星が見える。

 

さぁ、そろそろ何か食べないと胃の調子が悪くなってしまうぞ。自分に言い聞かせながら、つけ麺屋さんと油そば屋さんを通り過ぎる。とんかつ...揚げ物か。そして吉野家を見る。肉はいいな。肉は。ダイエット中だからたんぱく質はいい。たんぱく質はいい選択だと思う。ここはもっとがっつりしたと肉かな。そういえば近くにお手頃価格のステーキハウスがあったはずだ。と思ったとたんに、足が速まった。

 

あそこだ。店が見えるか見えないかくらいのあたりに来たときに、店の前に数人の家族連れがいるのが見えてきた。入店待ちか。だめだ。ここもだめだ。そもそも家族連れが多いこの店に、家族連れの多いこの時間に入店し、肉だけを頼む、という行為がふさわしいのかどうかもわからない。以前立ち寄ったときには、そんな男も見かけたが、今日はそういう心の葛藤もしたくないほど疲労感を覚えている。

 

落ち着こう。もう一度、底から考え直してみよう。何かを見落としているはずだ。今までの選択肢を捨てて、次の道を探すことだ。見つけなければならないー他の道を。

 

わたしはお腹がすいている。条件は短時間で、炭水化物を食べ過ぎることなく、好みのものを食べること。まだ仕事が残っている以上、アルコールもなくていい、なくていいのではなくて、なしだ。この時間にアルコールなしでふさわしい店はあるのか。サンドイッチとかそういう軽いものじゃなくて、ちゃんとした食事。さらに、短時間で。

 

ーおまえはどうする。どうしたいんだ?

 

まてよ。弁当を買うという手があるんじゃないか。西友。この時間なら、まだ残っている弁当の種類はあるはずだ。そして多分、この時間なら割引になっている。お買い得。そう思うと、今までの迷いが嘘のようにふっきれてくる。思考が晴れ渡ってくる。小さい弁当でも総菜でもいいんだ。足りなさそうなら1個じゃなくて2個買えば。肉かうなぎの弁当が残っていたらよいのだが。

 

混雑の中、人に触れないように後ろからお弁当のケースをのぞき込む。

 

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カキめし重。

480円の30%オフで税込362円。

 

これだ。

探していたのはこれだったんだ。

 

最後の1つがわたしを待っていてくれた。いや、そう思うのはわたしの驕りなのかもしれない。

 

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牡蛎は小さいのから順番に並んでいる。

 

下から覗いている錦糸卵がいい感じだ。

ご飯もまあまあおいしそうだ。

 

全体の野菜割合も悪くない。

 

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牡蛎はしっかり味があった。

いい。

この味はいい。

 

周りにあるきんぴらや青菜にはしっかり味がついているので、この牡蛎の味を殺さない程度の味付けがちょうどよく思える。

 

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そして、わたしが密かに好きなものはウドとフキだ。自分で山ほど調理をすれば気が済むまでたくさん食べることができる。それこそ飽きるまで。だが、こういうところで、意図せずに出会うフキもまた格別の味わいだ。

 

よかった。

これでよかったんだ。

 

もう気持ちはくずれない。一気に食べ尽くしてしまおう。

 

ごちそうさま。

誰も聞いてはいないが、手を合わせて小さく呟く。

 

ごちそうさま。

 

 

64(ロクヨン)下巻 130ページあたりの三上風に書いてみました。

今日はここまで。

 

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