制作年2013年。
日本公開は2016年4月16日。
パレスチナ人監督、パレスチナ人スタッフによる、パレスチナの映画です。
第66回カンヌ国際映画祭のある視点で上映され、特別審査員賞を受賞しています。
分離壁で囲まれたパレスチナの今を生き抜く若者たちの日々を、切実に、サスペンスフルに描く。カンヌ国際映画祭をはじめ、多数の映画祭で絶賛され、2度目のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート(パレスチナ代表)となった。スタッフは全てパレスチナ人、撮影も全てパレスチナで行われ、100%パレスチナの資本によって製作された。
あらすじ
思慮深く真面目なパン職人のオマールは、監視塔からの銃弾を避けながら分離壁をよじのぼっては、壁の向こう側に住む恋人ナディアのもとに通っていた。長く占領状態が続くパレスチナでは、人権も自由もない。オマールはこんな毎日を変えようと仲間と共に立ち上がったが、イスラエル兵殺害容疑で捕えられてしまう。イスラエルの秘密警察より拷問を受け、一生囚われの身になるか仲間を裏切ってスパイになるかの選択を迫られるが…。
オマールは主人公の名前。そして壁は分断壁。
原題は「オマール、最後の決断」なのでしょうか。
アカデミー賞 外国語映画賞 『オマール、最後の選択』
分断壁と民族についてよくわからないと、話がわからないところがあります。映画を観る前に予習が必要だったかな、とも思いましたが、いつも、敢えて予習なしで見るわたし。そして予習なしで見たからこその、集中と衝撃、と思うと、いつものように予習なしで映画を観て、わたしは正解だったと思っています(もう一度 観たい)。
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この映画をより理解するためには予習が必要かどうか。知識があった方が理解は進むと思いますが、予習しないと映画が楽しめないかというと、そうではありません。民族間の対立やパレスチナの問題についての知識がなくても、オマールの友情、恋愛、悩み、葛藤、それは状況が違えども、多少の想像力があれば入り込めます。
そういう意味からは、堅苦しく思うことなく、まずはたくさんの人が見て、それから興味を持って分断壁やパレスチナ、イスラエル問題を調べたり考えたりしてもよいのではないかと思います。気軽に、たくさんの人に観て欲しい。オマール役のアダム・バクリはイケメンですし。
分断壁はイスラエルがパレスチナ自治区を分けるための壁。アパルトヘイトウォール。
イスラエルが「テロリストのイスラエルへの侵入を防ぐため」と称してヨルダン川西岸地区に建設中の壁。
しかしながらその壁は、イスラエルとパレスチナの境界に建設されているのはでなく、90%以上がパレスチナの中に侵入してパレスチナ人の土地を奪いながら建設されている。
いろいろ調べていたら、こちらのサイトが見つかりました。
実際に行かれた方の写真と記事です。
パレスチナ人はもうこの壁を越えることは出来ない。
映画でも「高い壁だなぁ」と思いましたが、高さだけでなくとんでもなく長い長い壁が作られ、そしてなお伸びていくという。
映画では、オマールがその壁を乗り越えて恋人や仲間に会いに行きます。
映画のPR文では「拷問」という文字もあって、しかもパレスチナですから「怖い映画かも」というイメージも持たれるかもしれません。わたしもかなりびびって腰が引けた感じで恐る恐る観に行きました。
確かに拷問シーンもありますが、それほど残虐なシーンはありません。そこがテーマではないのでそういうシーンはそれほど長くないです。人によって感じ方は違うと思いますが、海外ドラマのFBIとかCIAものを見られる人なら大丈夫でしょう。
ではテーマは何なのか。
これを書きながらも、それをひとことでは表せないもどかしさがあります。
分断壁で閉じ込められた若者たちの鬱憤。それを吹き出させようとする若さや熱い衝動。恋人や友人を思うこと。自分の信念に従って命を投げ出すことができるのか。葛藤しながら突っ走っていく様。誰も信じられなくなりそうになるけど、自分だけは信じていたい。大切に思っている信念や正義は、他人にとってはそれほど大切ではないという現実。
そんなことをあれこれと考えさせられます。
観終わったあとから、じわじわ来ます。時間が経つにつれてじわじわきます。あれこれ考えます。で、結局何が正しいのかどうしたらよかったのか、そういった結論は何も出ません。
結論や、「絶対の正しさ」はないのです。多分。
ただそこには「思い」がある。そしてその思いさえも、人それぞれだということ。もやもや。考える。振り出しに戻る。最後のシーンを考え直す。誰かと話したい。でも、話さずにまだまだ自分の中で発酵させたい。あれこれ。で、思うのです。そういう映画はいい映画なんだな、と。
機会があればぜひどうぞ。
今日はここまで。
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