あの人とのデートの帰りでしたから、多分10年くらい前のことだと思います。
郊外の駅を降りてすぐのところに、広場やロータリーがあって、その先に商業施設がありました。広場を抜けて少し歩いて、彼の家まで歩こうと、駅を出て歩いていくと、ふらふらと怪しげな感じで歩いているおじいさんに遭遇しました。そのおじいさんは時折、何かを言いながら歩いていました。
最初、わたしたちと同じ方向に歩いて行き、そして、戻ってくる感じで、行ったり来たりしています。夕方の早い時間でしたが「酔っているのかな?」と思って、ふと見ると、手には刃物のようなものが握られていました。
わたしたちを通り過ぎ、またこちらに戻ってきます。わたしたちがそのまま歩いていると、そのおじいさんと正面から出会うことになります。
「こっちに行かないで、あっちを歩こうよ」
と、彼に小声で言いましたが、彼はまったくおじいさんに気がつかず
「え?なんで?こっちのほうが近いし、そっちに行く用事もないし」
と、却下されてしまいました。すたすた歩いて行く彼のジャケットのひじのあたりを 可愛らしく 引っ張り
「いいから。こっちに」
と、おじさんを迂回する方向に行きました。
「えーーーなんでーー?あ。ドラッグストアに行くの?それとも何か食べたいとか?いま食べてきたのにもうお腹空いたのww」
違う!
違う!!
違うよ!!
(゜д゜;)はぁ?
あの、おじいさん何か刃物みたいなものを持っていたんだよ!!
2回もわたしたちとすれ違ったのに、彼は全然気がついていませんでした。それくらいですから、周りの人も刃物には全く気がついていません。わたしもその刃物が何なのかははっきりと断言できませんでしたが、おじいさんは確かにキラッとする刃物のようなものを持っていると思いました。
かなり人通りもあるし、小さい子を連れた家族もいるのに。
「警察に通報した方がいいかな...」
「え?そうなの?」
「だって、人たくさんいるし、何かあったら大変なことにならない?」
「え?そうなの?」
駅の近くには警察署があるのですが、携帯で警察に電話しました。
その時、わたしは携帯で警察に電話したら、当然、その携帯からわたしの氏名や現在の居場所なんかが、警察にはスパッと解ってしまうと思っていたのですが、そんなことはないんですね。
「○○駅前に刃物のようなものを持っているおじいさんがいます」
そこから、わたしの氏名、住所などを細かく聞かれて
いやいやいやいや!
そんなわかりきったことを言っている間に、おじいさんが刃物を振り上げたらどうするんだよ!!とにかく早く来て!!
でも、誘拐事件のようにわたしの電話を逆探知を準備しているわけもないのですから、わたしのことがわかるわけもありません。焦りながらも聞かれるままに答えました。
通報してその場を立ち去ろうと思っていたのですが
「その場にいてください。警察官が向かいますから」
と、言われたので、その場で待ちました。
この時点で
「えーおれーー先に帰っていていい?」
と言われました。
彼に。
いやいやいやいや!ちょっと待ってよ!!!
ほどなく警察官が来ました。
迷ったのですが、わたしから声をかけました。
警察官もおじいさんを探しましたが、おじいさんは見あたらなくなっていました。おじいさんが確認できないので「どこらへんにいたの?」と、警察官にあれこれ聞かれたのですが、その時!!商業施設に入ろうとしているおじいさんを発見しました。
「あ!あの人です!!あのおじいさん!いま建物に入ろうとして...」
そこからの警官は大変素早く、複数の警察官が商業施設に入ろうとしているおじいさんを拘束しました。
拘束されるときにおじいさんは少し暴れたのですが、そのすぐ前には、小さな男の子を連れたお母さんがいました。
「入る前に教えてもらってよかった」
と、言われました。
たくさんの人がいる商業施設に入ってしまう前に、と(少し手荒になりましたが)何とか拘束したそうです。
おじいさんの持っていたものは鉈(なた)でした。
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「これから、署で調書をとらせてもらいますので」
「あーはい」
「少し時間がかかりますが」
「は...い」
「そちらの彼もご一緒に」
「あーおれは全然何も見てないのでっ(きっぱり)」
「一緒にいらしたなら、何か気がつかれたことを」
「いや、何も!全然!気がつかなかったのでいいです!(きっぱり)」
「おれ先に帰ってるから、終わったら連絡して~」
と、彼は帰っていきました。
調書はかなり長くかかりました。
(パソコンわたしが代わって入力してあげようかっ!!!)
そうこうしている間に、ふと見ると、取調室の向こうにおじいさんが。
こんなに近くでいいの?
今日はここまで。
今週のお題「ゾクッとする話」
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