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おうつしかえ

ブヒブヒ言ってるだけです。誰も恨んでいません。

隣のおばあさんが亡くなったときのこと

怖い話・不思議な話・不運

あれはわたしが中学生の夏休みでした。

 

隣の小さな貸家におばあさんが一人で暮らしていました。

 

地主が多いところで、貸家(ごとき)に住んでいる独り者のおばあさんということで、周りの人はあまり親しくしていませんでした。

 

母は結婚してこの土地に来ましたが、何年経っても余所者でした。ややもすると、母だけのけ者にされたり、陰口を言われたりもしていたようです。今で思うといじめられていた?という感じでした。

 

ご近所にそれほど親しい人がいなかった中で、そのおばあさんとは、時々お総菜のおすそわけをしたり、旅行のお土産をやりとりしたりと、時間を掛けて少しだけ親しくなっていきました。

 

おばあさんはわたしたちにも優しく、回覧板をもっていくと、「ちょっと待ってね」と奥へ行き、「少しだけど」と言って、チョコレートをくれたりしました。玄関口で一緒におしゃべりをしたりもしました。

 

 

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ある日、母が「ちょっと」とわたしを呼びました。

 

「なに?」

「今日、隣のおばあさんが来たんだけど、具合悪いみたいなの」

「そうなの?」

「う・・・ん」

「病院行ったの?」

「病院行くように言ったら、行くって言ってたけど。余計なこと言っちゃったかな、って思って気になっちゃって」

「いや、それは病院行った方がいいでしょ。おばあさんどうしたんだろうね」

「なんかね。口からも出血しているのよ。それでおばあさんもすごく心配していたんだけどね」

「病院行ってくれるといいねぇ」

「う・・・ん」

 

母はとても心配そうでした。

 

何か大きな病気なのかもしれないと、うっすら思っていたようです。

 

普段はそれほどしょっちゅう行き来しているわけでもないのですが、2-3日後、またおばあさんが母を訪ねてきました。

 

「病院へ行って検査してきたの。病院へ行くように言ってくれてありがとう。検査もしたからこれで何の病気だかわかるでしょう。安心したわ。結果は来週出るからね。そうしたら必ずまた来るからね」

 

その時も、ティッシュでおさえていた口からは出血していましたが、病院へ行ってきたという報告とお礼を言いに、病院帰りに立ち寄ってくれたようでした。

 

母の「病院へ行け」アドバイスはおばあさんを不愉快にはさせていなかったようですし、何より病院へ行ったということで、母は少し安心しました。

 

安心したはずだったのですが。

 

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翌日あたりから、母の様子が少しおかしくなりました。

 

暗い顔をして、口数が少なくなりました。

 

「おかあさん。なにかあったの?」

と聞くと、

母がわたしに言いました。

「ねぇ。何か変な感じしない?」

 

母とわたしは、離れていても同じ時期に、同じように具合が悪くなったりします。でも、母はわたしが小さいころから、その手のことは「気のせい気のせい」「怖がっているとなんでも○○」「枯れ尾花」と全面否定しますし、わたしも物心ついてからは「悪いものに周波数を合わせてはいけない」「それは脳のなせる技」と自分に言い聞かせています。

 

ちょっと「あれ?」と思うことがあって母に言っても、普段は「違う」「気のせい」「そんなものない」と、母から完全否定されていたわけですが、この時は母から言い出したのです。

 

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「何か変な感じがして、夜眠れないのよ」

「へ・・・変な感じって何よ?(←すでにびびってる)」

「・・・あなた夜、カラスの声聞かなかった?」

「あ・・・」

「カラスの声が1日中やたらと聞こえるんだけど、普通は夜には鳴かないでしょ。でも夜中にうるさいくらい鳴いていたの聞かなかった?」

 

聞きました・・・。

 

他のきょうだいは聞いていなかったようですが。

 

また次の日には

「何か変な感じがするのよ」

「何かって、何が?」

「おばあさんの家のほうからカラスが鳴いている気がするの」

「そうなの?」

確かにそちらのほうから、カラスがうるさいくらい鳴いているのをわたしも聞きました。

 

 

「でね、おばあさんの夢も見たの」

「どんな夢?」

「それが何も言わないの」

「うーん」

 

また次の日には

「なにか、変なにおいがする」

「変って?どんな?」

「いやなにおいがしない?」

「うーん。どこが?」

「うちの○○側の部屋あたり」

 

うちの○○側にはおばあさんの家があります。

 

わたしも嫌な気持ちがしないでもなかったのですが、母が心配しすぎて過敏になっているのかもしれないと思い、

 

「なんでもないと思うけど。明日行ってみれば?」

と、言いました。

 

「まだ結果は出てないと思うのよ」

「でもさ、心配だったら何かお菓子でも持って行って、少し話ししてくれば?」

「結果出たら来てくれるって言ってたから、来ないってことはまだ結果出てないと思うのよ。こっちから根掘り葉掘り聞き出すみたいな感じになっちゃうし。病気のことって言いたくないこともあるでしょ」

「でも、心配なら様子だけ見てきたら?」

「そうねぇ」

 

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翌朝わたしは部活動に行くことにしました。前日まで体調が悪かったので部活動を休むつもりだったのですが、やはり部活動に行こうと思ったのです。

 

「部活休まないの?」

「うん」

「一緒におばあさんの所へ行かない?」

「えええー?!!行かない!!部活行くから!!!」

 

わたしが学校へ出かけたあと、母は時間を見計らっておばあさんを一人で訪ねました。

 

玄関先で声を掛けても、返事がありません。具合が悪くて寝ているのかと思い、何度も声を掛けながら玄関扉を開けました。

 

鍵はかかっていませんでした。

 

おばあさんの家は、玄関あけるとお部屋がありますが、普段は玄関をあけても直ぐは見えない奥のお部屋で寝ていました。

 

ところがその時、玄関扉をあけて母の目に飛込んできたのは、おばあさんがベッドで体を少し起こした状態で亡くなっている姿でした。

 

まるで、すぐ見つけてもらえるような感じで、玄関を真正面に見据えて、おばあさんは亡くなっていたそうです。

 

転げるように母は家に戻り、その時在宅していたきょうだいを震える声で呼びました。

 

「なに?」

「あなたも一緒に行って確認してーーーーー!!!!」

「ええええええーーーー?????」

「ほら!一緒に」

「やだよーーー」

 

結局近所の人も呼んで一緒に確認をしたそうですが、すでにおばあさんは亡くなっていました。

 

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出血したものが喉に詰まったことによる窒息死でした。母を訪ねてくれたその日になくなっていたのではないかということです。

 

夜のカラスの声はそれから聞いていません。

 

その日からしばらく、わたしは母ときょうだいと同じ部屋に布団を並べて敷いて寝ました。やさしいおばあさんでしたが、それまでの不思議なことなどもあって怖かったのです。

 

母は自分を責めていました。

 

もっと早く訪ねていればよかった。

話をたくさん聞いてあげればよかった。

出血した姿を少しでも気持ち悪いと思って申し訳なかった。

 

などと後悔していました。

 

おばあさんの葬儀は離れて暮らしていたご家族により、とり行われました。

 

日にちが経ち、ショックも和らいできましたが、まだわたしは母と夜は一緒に寝ていました。わたしが怖かったということもありますが、母が憔悴している感じがしたからです。

 

もともと体が弱かった母の体調も心配でした。

 

「おばあさんは、お母さんに感謝していたと思うし、お母さんはおばあさんに悪いことはしていないんだから、おばあさんに悪く思われたりすることはないよ。感謝していると思うよ」と、何回か言いました。

 

でも母は「おばあさんが夢に出てきたときの様子が・・・」と、気にしていました。

 

そしてその夜、母の夢にまたおばあさんが出てきたそうです。

 

おばあさんはにこにこしながら、母に感謝の気持ちとお礼を言ったそうです。そして「渡したいものもあるから」と。

 

翌朝、母がわたしにそんな話をしてくれました。

 

しばらくして、おばあさんの手紙がご家族から届きました。遺品の整理の時に出てきたそうです。そこにも母への感謝の気持ちが綴られていたそうです。

 

ご家族から聞いた話では、預金通帳や債権、保険証書などがひとまとめにされていて、家族に宛てた手紙もあったそうです。まるで死を予想していたかのように。

 

検査の結果、重い病だったということを、おばあさんは知らないままに亡くなってしまったのですが。

 

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怪談話が学校で流行ったことがありましたが、当時この話はしたことはありません。

 

おばあさんのことを好きでしたから、友人におばあさんを怖がられるのもいやでしたし、「それは気のせい」「そんなことない」と否定されること、どちらもいやだったからです。

 

でも、あまりにも身近で、不思議なことが多かった話。一度はまとめておこうと思っていました。おばあさんを忘れないためにも。

 

また夏がやってきました。

今日はここまででございます。

 

今週のお題「ふるさと・夏」

 

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